000 回想

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──幼稚園児の頃。 気付いたら詩絵が好きだった。 家は近く、同い年で同じ幼稚園。 性別こそ違えど、自然と二人で遊ぶことが多かった俺と詩絵。 詩絵は砂遊びが好きだった。 詩絵の影響を受けていたのかはわからないが、俺も砂遊びが好きだった。 詩絵がたまに見せる可愛い笑顔が、これからもずっと俺だけに向けられるものだと思っていた。 あのときは。 風がページをパラパラとめくっていくように、楽しかった時は駆けていく。 異変が起こったのは、高校生のとき。 詩絵は少しだけ大人になって、綺麗になった。 ちょっと色素の抜けた、栗色の長い髪。 髪と同じ色の栗色の瞳。 人形みたいに綺麗で白い肌。 詩絵が俺に見せる変わらない笑顔が、俺の胸を幾度も幾度も疼かせた。 しかし。 その顔は、サッカー部のエースに対するキラキラした憧れの表情に変わり始めた。忘れもしない、高二の夏。 無言の内に安定していたと思っていた関係は、俺の独りよがりだった。 「俺だけの詩絵」? 馬鹿馬鹿しい。なんて滑稽な勘違いだ。 まるで砂糖が溶けるように崩れていく脆い「幼なじみ」という関係。 そして詩絵は初恋を、実らせた──。
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