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──幼稚園児の頃。
気付いたら詩絵が好きだった。
家は近く、同い年で同じ幼稚園。
性別こそ違えど、自然と二人で遊ぶことが多かった俺と詩絵。
詩絵は砂遊びが好きだった。
詩絵の影響を受けていたのかはわからないが、俺も砂遊びが好きだった。
詩絵がたまに見せる可愛い笑顔が、これからもずっと俺だけに向けられるものだと思っていた。
あのときは。
風がページをパラパラとめくっていくように、楽しかった時は駆けていく。
異変が起こったのは、高校生のとき。
詩絵は少しだけ大人になって、綺麗になった。
ちょっと色素の抜けた、栗色の長い髪。
髪と同じ色の栗色の瞳。
人形みたいに綺麗で白い肌。
詩絵が俺に見せる変わらない笑顔が、俺の胸を幾度も幾度も疼かせた。
しかし。
その顔は、サッカー部のエースに対するキラキラした憧れの表情に変わり始めた。忘れもしない、高二の夏。
無言の内に安定していたと思っていた関係は、俺の独りよがりだった。
「俺だけの詩絵」? 馬鹿馬鹿しい。なんて滑稽な勘違いだ。
まるで砂糖が溶けるように崩れていく脆い「幼なじみ」という関係。
そして詩絵は初恋を、実らせた──。
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