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苦しいときも悔しいときも、寝て起きてを繰り返せば明日が来る。 大学生になった俺と詩絵。 と、詩絵の彼氏。 彼らの関係はまだ、続いている。 俺は詩絵を忘れようと違う大学を目指した。勉強に集中していれば忘れられる気がしたからだった。 大学に受かって、達成の嬉しさより安堵が先に来た。これで完璧だと思った。 卒業して、もう距離を取ろう。 こうして俺は詩絵を諦めるはずだった──。 ある朝。 俺は誰もいない道で、大きく伸びをした。 朝の町が好きだ。 いつもの見慣れた町の空気も朝日にキラキラして、心なしか澄んでいる気がするからだ。 「ふう」 深呼吸して、大学に向かうためスクーターに跨がった。 と、そのとき、隣の家のドアががちゃりと音をさせて開く。 俺の心臓が大きくドクンと、波打った。 「あ、樹(イツキ)! おはよう!」 「……おー、詩絵(シエ)。おはよう」 こうして偶然出会うたび、どうしようもなく締め付けられるこの胸。 俺はひとつ、一番大事なことを見落としていた──。 俺たちはお隣さんだったのだ。
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