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「ったく……彼氏に怒られても知らないからな」 とかいって結局ヘルメットを渡してしまう俺。 ほんとにバカだ。 「えへへ、ありがとう。キリくんはこのくらい許してくれるから大丈夫」 詩絵はそれを受け取って、俺に笑顔を見せた。 ……このくらい、か。 はあああー……。 俺は心の中で盛大に溜め息をつく。 キリって言うのは桐谷創史。 詩絵の彼氏のことだ。 学生時代もサッカー部のエースとして女子に人気を博したイケメン男。 ちなみに俺も、女子から人気がないわけではない。 キリと俺で女子の好みが二分するとまで言われた見た目だ。 キリみたいにずば抜けた運動神経はないが、頭は良い。 だからそれなりにモテるし、彼女も何人もいた。 ……なのに何故か、一番欲しい詩絵には振り向いてもらえない。 こんなに近くにいるのに、抱き締める勇気すらない。 告白して関係をギクシャクさせる勇気すら、ないのに。 君はこんなに近くにいる。 「樹、もう出発していいよ」 「ん。りょーかい」 多分一生詩絵しか愛せないんだろうなっていうのは薄々感じ始めている。 「わー、自転車より速いね」 「はは、何ソレ。当たり前だろ」 走り出す風を体に感じる。 紛れもなく、俺たちの間で「幼なじみ」は続いていた。
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