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詩絵の通う大学の門の前に、スクーターを止める。
……事故らなくて良かった。
詩絵が降りて、スクーターの後ろが少しだけ浮いた。
「はー、ありがとう! 楽しかった」
「今度から彼氏に頼めよ」
「はいはーい。またねー」
本当は心の中じゃこんなこと絶対に思うことなんてない。
考えただけで嫉妬で狂いそうになるっていうのに、上っ面だけ良い幼なじみだ。
「あ、そうそう」
歩き出そうとした詩絵が、くるりと後ろを振り向いた。
反動で栗色の長い髪が、さらりと揺れる。
「……何?」
「お返しにこれ、あげるね!」
詩絵は肩に掛けていたバックから小さいタッパーを取り出した。
「……何コレ?」
「何って何よ。クッキーでしょ」
……確かに、タッパーからはほのかなバターの香りがした。
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