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蓋を開けてみるとキリンとかアヒルとか、色んな形をしたクッキーがバラバラと入っていた。
「すげ、旨そう。手作り?」
「そうだよ。えへへ、可愛いでしょ?」
「おー、可愛い可愛い」
俺はフラミンゴをつまみ上げる。
可愛い……か?
「どうしたんだよ、急にこんなん作って」
「うん。あのね……えーと……」
「……何だよ」
もそもそと、何かを口ごもる詩絵。
ああ。なんか、分かった。
多分それ、聞きたくないことだ。
詩絵はちょっと照れたように、はにかんだ。
「き……キリくんにあげようと思ったの! だけど自信ないから、先に樹に試食してもらおうと思って……」
「……へえ」
ジクリ。
何度も傷付いた胸の奥が、また刺されたように痛んで悲鳴をあげた。
こんな顔、俺のためにはしてくれないだろう。
当たり前だ。彼氏と彼女ではないのだから。
そう思っても、胸はジクジク痛み続ける。
……もう、行こう。
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