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『ここで逃げたら、きっといつまでもオバケのまま』
その言葉を刻まれた時、ヴァレリーの中では激しい後悔の念が押し寄せていた。払いのけたいと思うほど強く、寄せては返す。
結局、死んで逃げようとしていたにすぎなかった。厳しい生活からも、息子を養う責任からも。これで全てが終わる、と決めつけて。
しかし、それは大きな間違いだった。
「私、死ねば何もかも終わりって思ってた……。その先の事まで考えてなかった。でも、そうじゃないのね……。人は、生まれ変わる」
最期の瞬間を覚えていなかったのも、きっと無意識にその記憶をないものとして排除していたのだろう。全てを放棄し命を絶った後でさえ、事実に目を向けようとしなかったくらいだから。
過去は取り戻せないし、変えられはしない。ならば、今、変わるしかない。
それが分かったからには、この思いを持って行く先が必ずあるはず、と。
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