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「君の死に方は、適切じゃなかったと思う」
戒めるかのように淡々とそう言った、架。ヴァレリーにもそれは聞こえていた。
彼は自分を見損なったに違いない。それもそのはず。突然生を閉ざされた彼にとって、自ら命を絶った自分は、どれほど浅ましい存在か。
「ごめんなさい……。辛い思いをさせて、本当にごめんなさい。私、もう行くから……」
他に言葉を見つけられなかったヴァレリーは、その場を立ち去ろうと窓際まで移動し、縁に手を掛けて身を乗り出した。架と一緒にいる資格など自分にはない。むしろ彼を傷つけるだけ。そう考えたから。
これが、生命を冒涜した者の惨めな末路。
きっと、このまま独り。
しかし、そんな彼女の耳に次に届いたのは、「けど!」という、強い逆接の言葉だった。
それを発したのは勿論、架以外にあり得ない。動きを止め振り返ったヴァレリーの方を真っ直ぐに向き、彼はこう続けるのだった。
「……ここで逃げたら、きっといつまでもオバケのままだ。今更、どこへ行くつもりだよ?」
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