其ノ異血

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いや、まぁ 大学生でも就職が 難しいと言われているこのご時世 親の金で通わせてもらっていた 大学を中退し、 その結果、案の定 両親から破門されてしまった 人間に働き口があっただけ まだましなのだろうが それにしてもこの扱いは酷すぎる この蒸し暑い中 上司の命令で事務所から 5.5キロは離れている 駅前に新しく出来た洋菓子店に 好きでもない、むしろ大っ嫌いな 甘い洋菓子をしこたま買いに 行かされるハメになるとは… 早起きはなんだかの得だと 始めに言った奴をぶん殴ってやりたい そう思いながら 朝、上司に言われた言葉を思い出す 「あれぇ?神前君。 今日はいつもよりも 幾分か早起きだねぇ。 ちょうど良かった。 たった今、ボクの命の 次に大切なスイーツが 切れてしまったんだ。 最近開店したばかりの洋菓子店まで 足を運んできてはくれないかね? 勿論、君の分も 欲しければ買ってくるがいい。 ボクはここで待ってるから」 …お前が行けよ まぁ、もっとも 雇われの身である僕が そんなことを言える筈もなく、 喉まで出かかった言葉を噛み殺し いつものように しぶしぶ自分の財布を片手に おつかいに出掛けたというわけだ
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