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月明かりが町中をてらし、光と影を色濃く写し出していた。
そんな中
英篤は不審な気配に気が付いた。
――まさか奴らが……
振り返らずに歩き続けてみた。
自分をつけているようだが、決して距離を詰めて来ない。
「(そろそろか…)」
キャンプファイヤーの跡が残る広場に向かって走り出した。
広場の中央まで来ると、
勢いをつけたまま振り返り、
止まった。
「姿を現せ!」
しばらくの沈黙が続く中、強い風が吹いている。
それでも不審な気配は確実に近付いてきていた。
風がやんだ……。
「なっ!?……やっぱりこいつらが」
建物の影から現れたのはモンスターだった。
狼、鷲、様々な動物の形を成してはいるが、みな本質は同じなのだ。
――こんな時にモンスターを操れる奴がいるとは
色のない目のモンスター達は、
徐々に英篤に近付いて来る。
英篤の顔は、ひきつりながらも不適な笑みを浮かべていた。
彼は右手で剣を抜いた。
不思議な形をしたその剣は黒い石が埋め込まれていた。
狼が正面から飛びかかってきた。
それを彼はいとも簡単に切りつける。
狼から黒い血が吹き出し、彼の衣服にかかったがすぐに消えた。
狼も切られるとすぐに黒い光の粒となって消えた。
彼の表情から光が消えていた。
それからは
正面から来たかと思えば背後から、背後から来たかと思えば左から。
次々と襲いかかってくるモンスター達を、体をひねらせながら切りつけていく。
しかしそこで彼の力が限界にきた。
膝をつき、息がかなり上がっている。
そんな中、彼は襲ってくるモンスター達に違和感を覚えていた。
――まさか、こんなにも次々に出現するものなのか?
――いやあり得る、あり得るがなぜここで…
彼は背後から襲って来た人狼をギリギリで避けた。
彼の目はもう焦点が合っていなかった。
避けられた人狼がもう一度襲いかかって来た。
しかし彼には反撃する体力が残っていない。
――仕方ない、使うか……
彼は目を閉じた。
英篤のいる所を中心に魔法陣が広がっていく。
広場全域に広がったそれはモンスター達を消していく。
しかし先程までと違い、モンスターは闇にのまれて消え去った。
それでもモンスターはまだ出てくる。
『お前は私を受け入れられるだけの力がある』
英篤はうっすらと目を開ける。
次の瞬間、全てのモンスターが白い光に包まれて消えた。
「シェ……ウル?」
彼は目の前にいるであろう女性の名を呼びながら倒れた。
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