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チカチカ--
信号は再びその歩み始めようとする者の行く手を阻む。
私はひとりそれを見ながらひそかにほくそ笑む。
そして、それの色が変わった瞬間、私はゆっくりと歩み始めた。
それを見た周りの人達は私を止めようと声をかける。
だが、その手を差し出してくれる者はだれもいない。
ブウゥゥゥン--
歩いているなか、タイミングよくひとつの大きなトラックが走ってくる。
これなら、間違いなく私は消えるだろう。
私はそう考えながらトラックに向かって全速力で走る。
その心に恐怖なんて無かった。
運転手は、自分に向かってくる私に驚いてもちろん力いっぱいブレーキを踏んだ。
だが、間に合うはずもない。
否、間に合わせない。
私はただそれだけを思いながら足を進める。
そして--
キイィィィ---
耳を貫くような音が聞こえ、次の瞬間には痛いくらいの衝撃が、私の体に伝わっていた。
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