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放課後の、人気の少ない教室。
大好きな音楽をイヤホンごしに聞きながら勉強をしていると、机に置いて見つめていた数学のプリントに影がさした。
私の勉強の邪魔をして嫌がらせしようとしたのだろう。だけど入学した日から約二ヶ月間ずっと嫌がらせされてきた今では、こんな嫌がらせでキャンキャン騒ぐ気もなくなってしまった。
私は小さく溜め息をつきながらイヤホンを外すと、プリントから目の前の人物――和泉優哉(いずみゆうや)先生へと顔を向けた。
「先生、邪魔しないで下さい」
「邪魔? 別に、邪魔しに来たわけじゃない」
先生はそう言うとニッコリと微笑んで、私の前の席の人の椅子に当たり前かの様に腰を下ろした。
座るなよ仕事しろよ何処か行けよ……などと一応年上で一応先生である人に言えるわけもなく、私はまた溜め息をついた。
「溜め息ついたら幸せが逃げるぞ」
「誰のせいだと思います?」
「嫌な事があったからと他人のせいにはするなよ?」
「間違いなく先生のせいですからっ!」
真顔でそんなことを言う先生に対して少し声を荒げながらそう言い返す。
私は先生を無視して先程見ていたプリントへと顔を移すと、冷静になれ自分とひたすら暗示をかけた。
「先生を無視して数学の宿題か? 俺のクラスにはこんな仕打ちをする酷い生徒が居るのか」
「教え子が自ら勉強をしているのに、それを邪魔する酷い先生が居るなんて嫌ですね」
すかさずそう返すと、私が無視をしないで返答したことが嬉しかったのか、それとも私の返しが面白かったのか、どちらかは分からないけれど先生はクスクスと小さく声を出して笑った。
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