2話

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  「翠川さん」 誰かが私の苗字を呼んだ気がして、私は半分飛んでいた意識を引き戻し、顔を机から勢いよく上げて目をゆっくりと開けた。 いつもの日課で放課後に教室に残っていたら、どうやらそのまま眠りそうになっていたらしい。 私が顔を上げると、日直だったのだろうか。クラスの中心的な存在で、いつもニコニコと笑っている男子(名前は忘れてしまった。しょうがないからニコニコ男子と呼ぶ)が心配そうな顔をして立っていた。 教室の鍵を閉めたかったであろうに、申し訳ないことをしてしまった。 「ごめんなさい、日直でしたか? 鍵、閉めれないですよね」 「ううん、大丈夫。翠川さんはまだ教室に居るの?」 「えぇ、まぁその予定です。鍵、私が返しておきますよ」 できるだけの笑顔で名前の分からないニコニコ男子にそう言う。 部活とかもきっとあるだろうし、多分鍵を渡してさっさと行くだろう。そう思っていたのに、ニコニコ男子は首を横に振った。 「実は俺、翠川さんに用があったんだ」 「……私に、ですか?」 私に用がある? 私はこのニコニコ男子に何か失礼なことをしてしまっただろうか? 「翠川さん、此処でいつも授業の課題やってるよね?」 「えぇ、まぁ……」 「俺頭悪くてさ。いつも課題を皆から写させてもらってるんだ」 ニコニコ男子はそう言うと、私の前の席の人の椅子に座った。 ……何だろう、嫌な予感がする。  
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