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「いつも課題写したりしたら、皆にも悪いし自分のためにもならないし」
「……まぁ、課題は自分でやるというのが当たり前ですからね」
「そこで、翠川さんに頼みたいことがあるんだ」
ニコニコ男子は申し訳なさそうな表情をしてそう言うと、私の顔を見つめた。
……辞めてください、本当に嫌な予感がする。
「俺と一緒に放課後、課題をやってくれませんか?」
「意味がわかりません」
今まで失礼の無いようにと出来るだけまともな返答をしていたけれど、つい口が滑ってしまい冷たい返答をしてしまった。
「意味がわかりません、って……もう一回、説明したほうがいいかな?」
「結構です。ニコニコ男子くんは私と放課後に課題をやって、あわよくば楽しようとしてる。違いますか?」
「楽したいわけじゃないよ! というか……ニコニコ男子って俺のこと?」
やばい。名前が分からないためつい私の中の勝手な独断と偏見で決めた呼称で彼を呼んでしまった。
私の表情で私が一人焦ってしまっているのに気がついたのか、ニコニコ男子はやんわりとした笑みを浮かべた。
「……すみません。変な呼称を付けちゃって」
「気にしてないよ。俺の名前、知らなか
ったんでしょ? 今回話かけたの、俺から一方的だったからね。むしろ俺の方がごめんなさい、だよ」
ニコニコ男子はそう言って私に謝罪の言葉を述べた。
……何か本当に申し訳ない気分になってきた。
ニコニコ男子は普通に良い人で、もしかしたら課題の話も純粋に、周りに迷惑をかけたくないと思っていたのかもしれない。そう、思えてきた。
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