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時刻は午後五時。
大学も終わり傘を差して帰路に着いていた春輝は、朝に柿野から聞いたニュースの事がまだ気がかりでいた。
拳銃と爆弾を持っていたと言うことは、犯人はテロ目的だろうか?
それにしたって、差程大きいとは言えないこんな町を狙ってテロなど起こすとも考えにくい。
春輝の住んでいる濃南は森林に囲まれた人口十万人の小さな都市である。
元々は小さな田舎町だったのだが外国の製薬会社アンブレラの工場が郊外に建設された事を受け飛躍的に発展した企業城下町となった。
町の中央は国道線を隔てて西側の鶴里と東側の曽木の区間に分かれている。
テロじゃないならただの無差別殺人目的の犯行とも考えてみたが、その案もすぐに消えた。
無差別殺人のためだけに爆弾なんかを用意するものだろうか。
銃だけで十分なのでは……?
授業の後柿野に聞いた話では、結局二人組の男は銃を撃つこともなく死傷者も出さず捕まったらしい。
考えても一向に犯人の思考は理解できず頭をわしゃわしゃと掻いた。
そしてふと思い立ち、春輝は家路の道を外れアパートとは別方向に歩き始めた。春輝がどこを目指しているのか。
目的地には程なく着いた。寂れた外観に相応しい程人の姿は周りに無い。
そこは例の白鳥駅だった。実際に現場を見てみれば何かわかるのではないかと春輝は考えたのだ。しかし、改札をのぞくと、「KEEP OUT」と書かれた黄色のテープが貼りめぐらされ中には入れそうに無いようだった。
仕方なく諦め春輝は踵を返し駅を後にした。
だが、否応なしに春輝は知ることになる。
これから始まる惨劇を…。
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