1章

4/5
前へ
/8ページ
次へ
アパートに帰宅後、すっかり雨に濡れて体に張りついてくる長袖のシャツを脱ぎ捨て、半裸で夕食の準備をしているとテレビから例のニュースが流れはじめた。 『今朝のニュースをお伝えします。今日午前6時、濃南市曽木区白鳥駅で拳銃二丁と爆弾一つを所持していた男二人組が銃刀法違反で逮捕されました。男は互いに職業不祥。死者、怪我人はいずれも出ていません。濃南市警の調べによりますと二人組の男の片方は首に噛まれたような傷跡があり体調が優れない様子で、鶴里病院に搬送された模様です。警察はテロも視野に入れて捜査を続ける模様です。』 ニュースキャスターが読み上げる事件の詳細と同時に画面下部で犯人の顔写真が映し出された。 犯人の顔は片方が黒縁メガネに、髪は几帳面に七三に分けてあり清潔さがにじみ出ている三十半ばほどの男。 もう片方はメガネの男とは対照的で髪はオールバック、顎に無精髭を生やした顔は彫りが深く無愛想なイメージを持ってしまう。 ニュースが終わり調理する手を再度動かし、犯人の顔を思い浮かべる。 後者の男はまだしもメガネの男は人など殺しそうもない真面目な風貌だ。 てっきり、もっと凶悪な顔を想像していた春輝は正直拍子抜けしてしまった。 テロなど起こせそうもない。 何だか犯人の思考を真面目に考察していた自分が馬鹿馬鹿しくなってきて、自分自身を嘲笑した。 だが、春輝の考察行為事態はあながち間違いではなかった。 そるが証明されるのはそれからすぐの事である。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加