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「ここの扉をでて、まっすぐいって階段をのぼると、あったと思うけど‥。」
扉を開け、二人で顔を出す。
昼間と言うのに、廊下は薄暗く、日がさしてこない。
おばさんは、昼でも雨戸を開けないポリシーがあり、子供の頃は源太も、このうちでトイレにいけなかったことがあった。
源太は少し眉間にシワが入り、口をへの時に曲げている陽菜の表情を盗み見る。
ふん、ざまーみろ。
お前は、そんな顔がお似合いなんだよ。
最近やたらと、色気の出てきた陽菜に、おいていかれたような気分だった源太は上機嫌だった。
「‥源ちゃん‥。
ついてきて。」
「は?」
陽菜にすがるような目で、見られると、源太はいつも断れない。
小さい頃からの条件反射のようなもので。
「しょうがねーな。」
と言ってしまう、自分を源太は恨めしく思った。
ちっ。
うかれているこいつには、ちょうどいいクスリだったんだけどな。
不機嫌に歩き出した源太に、そっと繋いでくる小さな柔らかい手。
こいつ‥。
いつまで俺を子供だと思ってるんだか。
振り返ると、にへっと色気のない笑いを返す陽菜に源太は脱力する。
「ほらっ。
さっとしてこいよ。」
こくっと頷きながら、慌ててトイレに入る陽菜。
「絶対、まっててね!」
もう一度念を押しながら、トイレの中に消えた。
なんだこりゃ。
源太は首を振りながら、階段にすわりこんだ。
その時、階下から人の気配がして、源太はおばさんが自分達を探しているかもしれないことに気づいた。
まあ、ちょっとくらいは、いいよな。
陽菜を気にしながらも、源太は階下に向かった。
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