始まり

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陽菜が耳を澄ますと、階下で微かに人の話し声が聞こえる。 あ、もしかして、占い師のおばさんが来たんだ。 早くいかなきゃ・・! 陽菜は階段の電気を焦って探したが見つからない。 これで、トイレのドアを閉めたら、真っ暗になってしまうだろう。 でも、閉めないわけにはいけない。 ここは、人のおうち。 ・・・何で源ちゃん待っててくれないのよっ!!! しぶしぶトイレのドアを閉めながら、陽菜は半べそをかいた。 いつまでもここにいるわけにはいかなくて、階段を下りる覚悟を決める。 壁に手をついて階段に足を踏み出すとぎしっと軋んだ音が鳴った。 「ひっ・・・!」 小さく叫んで、足を引っ込めた。 昨日見たばかりの恐いDVDを思いだす。 ・・・こんな感じの古い洋館的なかんじだったんだよね‥ 思い出したくないのに、こんなときに限って思い出してしまうもので。 古い洋館。 忍び寄る人影。 そしてー。 ぴきっ‥ 「ぎゃっ!」 思わず声の出た自分の口を押さえた。 ・・何かの割れる音? ・・・誰か・・いるの・・? 陽菜は恐る恐る振り返った。
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