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「綾夢様。今日はこの後三つほど予算会議が入ってます。」
一人の若い男が綾夢に近づき、そういう。
その物腰はどことなく柔らかなものだった。
「純に任せるよ。私は今日は疲れた。」
純と呼ばれた男は、綾夢に言われた事に不満を覚えた。
「ですが綾夢様、そろそろ今後の予算について真剣に考えなければ、予算は減る一方で…」
純が申し訳なさそうにそう言うと、綾夢はいきなり立ち上がった。
右手に持っているワイングラスに並々と注がれている赤ワインを、間髪いれずに純にかける。
「私に指図するな!!」
赤ワインを頭から被った純は、髪はびしょ濡れで、水が滴り落ちていた。
「なくなってもまた私が稼げばいいのだろう?なに、すぐに数倍にして安泰だ。」
不気味に微笑む綾夢に、純は心底嫌悪を覚えた。
この自信はどこからくるのか。
しかし数日経つと、確かに金は数倍に増えていた。
そこが綾夢の奇妙な才能である。
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