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彼女の部屋の前まで行くと、彼女がドアの前で待っていた。
「今日は二回目のこんにちは、いや今の時間だとこんばんは、ね」
矢野祐希が笑顔で声をかけた。
豊はカメラのいわば師匠である祐希と交際をしているのだ。
祐希はドアを開けて、ダイニングに豊を引き入れた。
テーブルには様々な料理が並べられていた。
カルパッチョ、パスタ、サラダ、スープ、ワイン、そして「Happy Birthday YUTAKA」と書かれたケーキ。
「これ全部、祐希が作ったの?この短時間に?」
豊は料理の豪華さに少し驚いた。
「そう、材料の買い出しとか、下ごしらえとか、昨日から準備したんだから。ケーキは帰りに急いで買ってきたんだけどね」と豊にウインクした。
「とにかく座って、座って」と祐希はケーキのキャンドルに火をつけて、ハッピーバースデー豊!と声にした。
豊はキャンドルの火を一気に吹き消した。
「三十五歳、おめでとう」
「ありがとう」
二人はワインで乾杯をした。
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