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…ソファーで眠る虎の、規則正しい寝息。
窓から柔らかな日光が降り注ぎ
外からは、小鳥の声が聞こえてきて俺の心をくすぐる。
キッチンに立つ俺は、皿にミルクを注いで黒猫の側に置く。
黒猫は、夢中で魚を食べている。
魚を一匹食べ終わると、我に返ったように周囲を見回す。
すぐ側にミルクを見つけた黒猫は、さっそくミルクに舌をつける。
ぴちゃぴちゃと音を立て、夢中でミルクを舐めている黒猫。
俺はしゃがみ、黒猫のフワフワな背中を優しく撫でながら呟く。
「可愛いなぁ…。
飼いたいなぁ、猫…」
すると黒猫は、顔を上げて俺を見る。
「うにゃ~ん?」
俺は、黒猫に尋ねてみる。
「ねえ、うちの子になる?」
すると黒猫は、自分の口のまわりに付いたミルクをペロペロと舐めながら
しゃがんでいる、俺の膝の上に登ってきた。
俺が黒猫を受け止めて、優しく抱くと…
黒猫は、甘えたような声で泣きながら
俺の頬に、自分の顔をすり付けてきた。
「かわいい…!!」
俺は、決心する。
よし、この子を飼おう。
俺は黒猫に言う。
「名前をつけなきゃね。
何がいいかなぁ…
『クロ』は普通過ぎるな。
『タマ』って感じでもないしなぁ。
う~ん…悩むなぁ~」
その時。
しゃがんでいる俺の
頭の上から、女の人の声がした。
「その黒猫の名前は『キャロル』よ」
「…へ?」
俺は、声のした方向を向く。
するとそこには、見知らぬ女の人が立っていた…!!
細身の体。
鼻筋の通った、端正な顔立ち。
腰まで長い、ストレートの髪に…
なぜか、黒の袴姿。
女の人は、キリリとした視線で俺を見据えながら言う。
「…貴方が紅ね。
貴方、キャロルと遊んでいる暇なんて無いわよ。
修行は、すでに始まっているのだから…!!!!!」
………………へ?
突然の来客に
そして、突然の言葉に対して
俺の思考は、完璧にフリーズした。
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