前を向くということ

3/183
前へ
/359ページ
次へ
俺は思わず、虎に聞き返す。 「…今、なんておっしゃいました?」 すると虎は 「だから―、修行だって言ってんだろ。 お前という、男のクセに顔だけ綺麗な駄目人間には修行が必要なんだよ。 少しは俺を見習えよな―。 紅… お前というやつは、そうやってよー、親父が金持ちだからって、独り暮らししながらも金銭的な意味で甘えてるじゃねーか。 お前、男としてさ、それでいいと思ってるワケ? 今の時代、女だって立派に働いてんだぞ。 それなのにお前というヤツは……………」 「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ!!!!!! 気が向いた時だけバイトして、あとは女に寄生してる虎にだけは言われたくないから!!!!! ていうか、本当にどうしたんだよ虎!!!!!!!」 すると虎は、俺に一通の手紙を俺に差し出した。 「これは……」 その手紙を受け取って、読んでみると…………… 「父さんからだ…」 山奥の大きな屋敷に住んでいる、俺の金持ち父さん。 その父さんは、こんな内容の手紙を虎に送っていた。 『拝啓 虎くん 紅の友人である、君に頼みがある。 あの、弱っちくてどうしようもない紅を そろそろ…そろそろ 本当に、いい加減、強くしてくれないだろうか。 私は父親として、紅の貧弱さには深い深い心配しか感じることが出来ない。 どうか、よろしく頼む。 もちろん、報酬… つまり、きみの大好きな現金は好きなだけ渡す。 そんなわけで、どうかよろしく。 敬具』 「う…うぇえ~~~……………」 俺は無意識のうちに、体から力が抜け その場に崩れ落ちた…。 なるほど… 虎が、妙にやる気マンマンだったのにはそんなしょーもない理由が…………
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加