前を向くということ

5/183
前へ
/359ページ
次へ
俺は、夢うつつになりながらも 心の中で呟く。 …だいたいさぁ、修行することに何の意味があるっていうの? 自分を鍛えるため? 強くなるため? 強くなるため…かぁ。 どんな状況でも、ポジティブで居られるために? …なんだかなぁ…。 そうやって、いつどんな時でもポジティブポジティブポジティブポジティブってさぁ…。 正直、疲れない? 人間、そう簡単に前向きになれないっつーの。 ていうか、都合の悪い状況から目をそらして『ポジティブ』で居る状態こそが危険なんじゃないのかなぁ? 世の中、ポジティブでいれば問題が解決するわけじゃないんだよ? 良い人間がいれば、悪い人間だっている。 なのに、いつどんな時でもポジティブでいろなんておかしいよ。 極端な話、見知らぬ人間に、道端でいきなり包丁で刺されても 笑顔でポジティブに『刺してくれてありがとう』と言えってか? そんなの、ただの頭のおかしい人間だろうがよー。 だいたいさぁ、論語にだってあるじゃん。 心を正しい状態…つまり『仁』にしておけば、人を正しく愛することも憎むことも出来るって。 要するに世の中、プラスとマイナスで出来てるんだよ。 だから、俺は必ずしも修行をする必要は無いってわけだよ。 うん、俺は別に、間違ってなんかいない。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加