前を向くということ

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そして虎は、冷蔵庫から勝手にプリンを取り出し スプーンを使わずに、器用に口で吸って食べ始める。 「むぐむぐ… とりあえずさぁ、俺はここで、お前の帰りを待っててやるから。 ちょっと遊んでて、ほとんど寝てないからさぁ。 てなワケで、おやすみ~」 プリンを食べ終えた虎は、そう言い終えたと同時に 勝手に、ソファーに横になって寝息を立て始めた。 「うう…ホントに勝手なんだから…!!!」 俺はそう言いつつ、寝ている虎を睨み付けた。 しかし、虎は眠っているので いくら虎を睨んでも、イライラが増すだけで気分は全く晴れなかった。 「…はぁ…。 とりあえず、行くだけ行くしかないよなぁ………… その、修行とやらに……………………………… はぁ…………」 俺は大きくため息をつきながら 虎からもらった地図を眺める。 「行きたくない…行きたくない…行きたくない…」 と、同じセリフを 呪文のように唱えながら。 ………その時。 「うにゃあ~」 「…え?」 いつの間にか、俺の足元に 見知らぬ黒猫が居た。 黒猫は、俺を見上げながら アゴで何度も、俺の足にスリスリする。 「わぁ…人なつっこい黒猫だな。 どうして黒猫がこんな所に…? 迷い込んできたのかな?」 「うみゃあ~」 「ふふっ。そっか、そっか。 おなか空いてる? 何か食べる?」 「うにゃあん」 すっかり黒猫に心を奪われた俺は、冷蔵庫にあった『子持ちししゃも』を焼く。 焼き上がった子持ちししゃもを皿の上に乗せ、猫の前に置く。 「ほら、お食べ。 あ、熱いから気を付けてね」 「うにゃあ~ん」 ああ…可愛い黒猫だな。 なんだか… 修行のことなんて、どうでもよくなってきたな。 今の俺にはきっと、修行よりも… この黒猫が大切なんだと思う。 うるさかった虎は寝てるし、黒猫は可愛いし。 別に、修行なんかに行かなくてもいいや。
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