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朝、体育館に行く前に保健室に向かった
「…はい、終わり」
「ありがと」
ガーゼを交換してもらって脱いでいたTシャツを拾い上げる
「その様子だと…次で通院も終わり?」
「うん。ヤマトはまだかかるって…」
Tシャツに頭を通す
その頭を篠田が撫でた
「何?」
「話したいことがあるなら話して」
横に座った篠田は俺の髪を解かす
「…どんどん消えてくんだ」
そっと傷口に触れた
「忘れたくないから…消さないでって頼んだ。けど消えてく…どんどん傷が消えてく」
「忘れたくないの?」
「俺が忘れたらハジメが独りになる」
視線を上げて篠田を見つめる
「…どうしたらいい?」
「イチ…傷が消えても忘れない。大事な存在だったんだろ?そんな人は忘れようとしても忘れられない」
目を細めた篠田は俺を抱き寄せる
「大丈夫…忘れない」
「ありがと…」
息を吐くと気分が楽になった
「…体育館行こうか」
「わかった」
顔を上げると篠田は額にキスした
「…何」
「したかっただけ…なんなら口にしようか?」
「教頭にバラすよ?」
「クスクスッ…それは勘弁」
立ち上がった篠田は保健室のドアを開ける
「行こう」
頷いて篠田と体育館へ向かった
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