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イチの発言に視界が揺らぐ
「だから俺は…」
目を伏せたイチは片手で顔を覆った
「どうした?」
「…ダメだ」
イチの手が俺の体を押した
「イチ?」
「ごめん…俺」
イチの声が震えていた
「あのあと…ハジメ以上に誰かを好きになれるって思ってた。好きって思えるって…でも」
「イチ」
頬に触れるとイチはその手を剥がした
「やっぱり無理…俺…ハジメを裏切れない」
「っ意味わかんねぇ」
剥がされた手でもう一度イチの頬に触れた
また剥がそうとするイチの手を掴む
力を入れすぎたせいでイチは痛みに眉を寄せた
それでも俺は力を緩めずにイチを見つめる
「裏切れないってなんだよ…アイツはイチを傷つけたんだぞ…ヤマト先生も矢野もアイツが傷つけたんだぞ」
「それは俺が約束破ったから」
「だから何だよ?ただの約束だろ?人の気持ちは簡単に変わる…結局アイツはその約束で自分にイチを縛り付けたかっただけだろ」
まくし立てるとイチは拳を握り締めた
「…違う」
「っ何が違うんだよ?アイツはイチを独占したかっただ…っ!」
何かが叩かれる音と頬にじわりと広がる痛み
イチを見つめると涙を流しながら俺を睨んでいた
それで初めてイチに叩かれたと理解した
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