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「イチ…」
睨んだままのイチは俺の手を振り払った
「ただの約束ってなんだよ…何も知らないくせに…勝手な事言うなっ」
体を押されてソファから下ろされる
「俺の気持ちもハジメの想いも…俺たちがどんな気持ちであの人からの仕打ちに堪えてきてたかも…コウタにはわからない」
「っそんなの…わかるわけないだろ。どうせ聞いてもイチは話してくれないだろ」
「話せるわけない!」
怒鳴り声を上げたイチはソファから立ち上がって俺の胸ぐらを掴んだ
「あんな屈辱的なこと…簡単に話せるわけないっ…あんな事…誰にも話したくない」
俯いたイチは肩を震わせた
「コウタにはわからない…好きでもない人に組み敷かれた時の恐怖も…人として扱われなくなったときの絶望も…っでもハジメは、わかってくれた。あの人からの仕打ちを…2人で支え合って俺たちは堪えてきた」
顔を上げたイチは俺を睨みつけたまま腕で涙を拭った
「ただの約束とか言うな…俺たちにとってあの約束は、自分が人だって…ちゃんと生きてるって実感するために大切な約束なんだ」
胸ぐらから手を離したイチは後ずさる
「俺は…ハジメ以外に誰も好きになれない…なりたくない」
イチはそのまま部屋から出て行った
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