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「あなたの言葉を借りるのなら、私を救ったのは”お父さんの意思”ということになるんですかね? 確かにそうですけど、私は今でも神様に感謝してるんですよ? 出会いだけは神様の恩恵ですから」
菓子の最後の一切れを口の中に放り込んで、娘は少年を見た。悪戯気な光を湛えるその瞳から、少年は今度こそ視線を外さない。
「俺は……」
「貴方の救いも、神様のもたらす出会いにあるのかもしれませんよ? ま、貴方がなにから救われたいのかなんて、私は知りませんけど――」
娘はそっと少年の手を取った。
「これは”私の意思”です」
温かな娘の熱を握り返しながら、自分の顔は真っ赤になっているだろうなと少年は思った。
そして、異国の衣装を纏った美しい娘と故郷の街を歩きながら、こんな出会いをもたらしてくれたのなら、神様を信じてみるのも悪くないな、などと思ってみた。
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