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「んー、因果関係といっても、相手は神様ですからねぇ。貴方はないですか? 理屈なんて抜きにして、神様に救われたいと思ったことが」
娘の視線を感じて、少年は横を向いた。少しだけ自分よりも高い位置にある、娘の顔を見上げると、ふと目が合った。深く澄んだ瞳から、娘の心情を読むことはできない。その視線に射抜かれて、少年は思わず目を逸らした。
「神様に、人は救えませんよ」
ただ、自然とそんな感想が零れた。
「それはそれは、大それたことを仰いますね」
言葉とは裏腹に、娘はころころと笑う。それがなんだか悔しくて、少年は少しだけむきになった。
「だって神様は生きてないじゃないですか」
「うん? 神様は生きてないですか?」
「死なないんですから、生きているはずがありません」
「なるほど。それで、生きていないと人は救えないと?」
娘は少年の話しやすいよう、続きを促す。
少年は自分でも何を言おうとしているのか分からず、ただ必死に、溢れてくる言葉を口にしていた。
「人を救えるのは、誰かの意思だけです。同じ視線を持つ人だけが、救いになりうる……のだと思います。……すいません、わけのわからないことを言って」
「いえ。興味深いお話ですね。……それに、私も少しだけそのお話、分かる気がします」
「え?」
一貫して楽しげだった娘の声音に、一瞬だけ感慨めいたものが混じった気がして、少年は驚いて娘を見た。
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