1話

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 洋館は、鬱蒼と生い茂る森の中にまるで木々に埋もれるようにして建っていた。  元は白かったであろうその壁は、長い年月で色褪せていばらの蔦で覆われている。  正面に見える玄関は両開きで、重厚な扉の左右には真鍮製らしいドアノブが付いていた。  呼び鈴はなく、代わりに目線の高さにノッカーが取り付けられている。何とも時代錯誤な仰々しさだ。  ギイギイと耳障りな軋みを上げて開かれた扉の向こうには、吹き抜けの玄関ホールが広がっていた。正面には幅の広い大階段があり、その先には中二階とも呼べる広さを持つ踊り場がある。  ステンドグラスから射し込む極彩色の陽光を受けて、踊り場からは左右に二手に分かれる形で二階へと続く階段が伸びていた。  そこから更に上に目を向けると、玄関ホールの高い天井から吊り下がる荘厳なシャンデリアを見る事が出来る。
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