反転世界の住人

４話

.

　厨房は、酷い有様だった。

　恐らく居間と同じくらいの面積を持つであろうそこには、ずらりと無機質なステンレス製の棚が並んでいる。

　そして白いタイル地の床には、整然としたその空気を打ち壊すように、割れた陶器やガラスの破片が散乱していた。

　細かな破片の上には卵や野菜の切りくずなどがぶちまけられており、正に足の踏み場もない状態だ。

　室内の中央にはステンレス製の大きな調理台があるのだが、その上にもひっくり返ったボールや調理器具。そして種々雑多な肉や野菜が転がっている。

「加賀さん、何してるの？」

　最早生ゴミと化したそれらを前に、フライパンを片手に仁王立ちする加賀 力也の姿があった。