5話

4/9

264人が本棚に入れています
本棚に追加
/401ページ
 僕は加賀の右足首を持ち上げると、慎重にスニーカーを脱がせた。  そして屈んだ自分の左膝の上にその足先を乗せると、さっとスニーカーについた破片を払い落とす。  そうしてからまた丁寧に加賀の足に履かせてやった。同様に、左足の破片も落としてやる。 「チ、チワワくん……!」  すると頭上から、感極まったような加賀の声が降って来た。 「はい?」  見上げると、唇を真一文字に引き結んだゴーグル男がこちらを見下ろしている。  蛍光灯の明かりを反射するゴーグルが眩しくて、僕は直ぐさま目を伏せた。 「奥ゆかしい……ッ!」 「――はい?」
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!

264人が本棚に入れています
本棚に追加