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9話
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何者かに階段から突き落とされて、転落死したという過去の当主。その噂が、どこか楽しげな蓮美の声で耳の奥に蘇って来る。
これがそうなのか。
自分はこのまま、幽霊に窒息死させられてしまうのだろうか。
腔内でうごめく柔らかな感触に、戦慄を覚える。
額にじわりと厭な汗が浮かび始め、背筋を悪寒が駆け抜けて行った。
僕は自由にならない両足の代わりに、手だけをばたばたと動かした。しかしがむしゃらに両腕を振り回してみても、虚しく空を掻くばかり。
体に触れられている感覚も、その体温すらも感じる事が出来ると言うのに、掴めるのは目の前の空気だけだった。
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