9話

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 深夜にも関わらずガンガンと扉を叩いた。  しかし何度叩いて呼び掛けてみても、一向に応答がない。もう眠ってしまっているのだろうか。  扉に耳をつけて中の様子を窺ってみると、室内はしんと静まり返っていて物音ひとつ聞こえて来ない。  そうしている間にも、背後からひたひたと幽霊が迫って来ているような錯覚に襲われて僕は焦った。  思い切って部屋のノブに手を掛けると、失礼を承知で引いてみる。  すると鍵は掛けられていなかったようで、何の抵抗もなくあっさりと開かれた。
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