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10話
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「それでは、失礼させていただきます」
何故か畏まった態度で折り目正しく頭を下げる加賀。
やたらきりりと引き締まったその表情は、これから寝ようとする人間のそれではない。
僕は反応に困って布団の中で首を傾げた。
自室で幽霊に襲われた旨を加賀に告げた後、彼の部屋に泊めてもらう事になったのだが、生憎とベッドはひとつしかなく。ソファーも一人掛け用の小さな物しか置かれていなかったので、同衾する事になったのだ。
この洋館のベッドはセミダブルが標準装備のようなので、二人で寝るにしても充分な広さがある。
だからこちらとしては一向に構わないのだが、加賀は何故かこれから戦地に赴く新米兵のような面持ちでベッドに入って来る。
どうしてそんなに緊張しているのだろう。
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