10話

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 学業をそっちのけで趣味に走る余り、僕より二つ年上なのだが学年はひとつしか違わない。  このままだと来年には同学年になってしまいそうだった。  僕は小さく苦笑を洩らすと、鼻先まで毛布を引き上げる。  そしてつい先程までぶつぶつとぼやいていたにも関わず、振り返るともう寝息をたてている加賀の上にも掛けてやった。  幽霊に襲われて逃げて来た人間の真横で、その幽霊を見てみたいという些か無神経にも感じられる発言を耳にしても。僕はどうしてもこの加賀という男が憎めない。  身近に感じる高い体温と健やかな寝息に、全身の力が抜けて行った。  これでようやく安心して眠れそうだ。
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