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「酷いな、お前等」
人がせっかく素直に礼を言ったのに。気持ち悪って。普通に傷付くな。
「いや、だって、ねぇ?」
「歩が素直に礼を言うなんて、なぁ?」
「……男版のツンデレだな」
それは確かに嫌だな。っていうか、俺はツンデレなのか……!?
うわぁ榎本と被ってんじゃん。めっっっちゃ、嫌だな。
「ったく、礼なんていらねぇんだよ」
「そうそう。僕等が勝手にやったことなんだしさ」
「……なんなら掃除を一人でするか?」
「誰がするかバカ」
たまにだけど、俺は良い友達も持ったと思う。
気にするなと言ってくれるが、俺はやはり気にしてしまう。
この恩はいつかきっと返したい。コイツラが困った時、気にするな。と、同じ言葉を返してやりたい。
「あー腹減った。何か食って帰ろうぜ」
「悪いが、俺はこれから奏とデート」
「あ、僕も七海達と約束が……」
「へいへいさっさと行ってこい」
「……俺は小雪と遊ぶ約束が有る」
「何勝ち誇った顔してんだよ。てめぇのは羨ましくないからな」
十歳の頃は何もなかった。失った。
頼りになる友達もいないし、励ましてくれる人もいない。背中を押してくれる親だっていなかった。
でも今は、一緒にバカする友達がいて、支え合える彼女がいて、やる気のない母さんがいる。すっごく、幸せだ。
俺はこれからも大切にしていきたい。
とりあえず、これからデートと言う名の拷問(全額俺負担)に向かおう。
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