一章 早朝四時に起床する自称乙女。

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一章 早朝四時に起床する自称乙女。

 起床と同時に瞼を開く。まどろむ私が居なくなるまでは、そのまま特徴のない天井を見続けた。呼吸は荒い。心拍も乱れている。  理由。悪い夢を見た。  久しぶりに、悪い夢を。  内容はともかく。昨日(さくじつ)、私は友人から夢枕なる奇異なおまじないを教えてもらった。夢を操る魔法だと聞いていた。  魔法という安っぽい言葉の響きに、つい興味が湧いてしまったのも事実だった。  自身が使用する枕の下に、見たい夢に現れる“もの“の写った写真を入れる。一言で切り捨てるなら、それは迷信と呼ばれる方法だった。熱心に行程が二段階しかないおまじないを教えてくれた亜紀には悪いけれど、私は眉を寄せただけだった気がする。  簡単過ぎて怪しいんだもの……。  信じる心が五百ミリリットルは必要らしいとは友人談。なので、そもそも心は液体なのかという疑問は捨て置き――それ以上は内心ですら文句を言えなかったことも、より不満を育成する要因となっていた。  とりあえずは、捧げた供物を回収せねばならない。枕の下から、試しにと入れておいた犬の写真集を取り出した。 「…………」  茶・ミニチュアダックスフントのつぶらな瞳が、私をじっと見つめている。  頬がだらしなく緩んだ。落ちていたら拾っておいてほしい。一人で居るときは笑顔を自制しないと決めているせいか、たぶん私は、みっともないにやけ顔になっているだろう。
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