序章

2/3
139人が本棚に入れています
本棚に追加
/588ページ
混沌とした暗闇の中、ぼやけた光が円を作り出す。 その円の中心からぬっと現れた影は、その形から、ひざまずき、頭を垂れている格好だった。 しかし、肝心の影の本体はどこにも見当たらない。 そこにはただ、影だけが存在している。 「陛下、アレは逃がしてもよろしかったのでしょうか?」 すると、ふいに、不気味な影から、女性と思しき声が発せられた。 「良い。どう足掻こうともアレは私のもとに戻る…だが…そうだ、アレを連れ戻した者にはそれなりの褒美を取らせると伝えおけ」 「では、そのように」 淡い光の周りは以外は、先を見通すことなどできない濃厚な闇に支配されているが、そこには、確かに何者かが存在しているようだった。 「それより、あの王が復活する兆しをみせているようだが?」 地の底から響くような重々しい声が、深い闇に染み渡る。 「はい、ただ今、ラミアに対処させています」 影は淡々と、淀みなく、質問への返答を行う。
/588ページ

最初のコメントを投稿しよう!