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混沌とした暗闇の中、ぼやけた光が円を作り出す。
その円の中心からぬっと現れた影は、その形から、ひざまずき、頭を垂れている格好だった。
しかし、肝心の影の本体はどこにも見当たらない。
そこにはただ、影だけが存在している。
「陛下、アレは逃がしてもよろしかったのでしょうか?」
すると、ふいに、不気味な影から、女性と思しき声が発せられた。
「良い。どう足掻こうともアレは私のもとに戻る…だが…そうだ、アレを連れ戻した者にはそれなりの褒美を取らせると伝えおけ」
「では、そのように」
淡い光の周りは以外は、先を見通すことなどできない濃厚な闇に支配されているが、そこには、確かに何者かが存在しているようだった。
「それより、あの王が復活する兆しをみせているようだが?」
地の底から響くような重々しい声が、深い闇に染み渡る。
「はい、ただ今、ラミアに対処させています」
影は淡々と、淀みなく、質問への返答を行う。
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