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影の言葉に、その場には一時的な沈黙が訪れた。
しかし、まるでその状態が当然であるかのように、闇も影も微動だにしない。
「……ラミアか…無理であろうな」
ようやく闇から発せられた言葉に、影は肩を跳ね上げつつも聞き返す。
「それは、どういうことでございましょう?」
「その者では、どう足掻いたところで王の復活は阻止出来ぬと言ったのだ」
「…では、いかが致しましょう?」
威圧感を持った闇の言葉。
その言葉に、心なしか、そこに映し出されている影は震えているようにも見える。
「……そのままで構わぬ。どうなろうと、私の勝利は揺るがぬ」
「はっ、仰せのままに」
何もないと分かり、影は安堵の息をなんとか飲み込むと、はっきりとした口調で返答する。
その後も、淡々と報告を済ませた影は、一度、言葉を切ると、丁寧な一礼を行い、ハラハラと散るように消える。
そして、光の円も、影がなくなると、そのままスゥッと闇に呑まれる。
その闇には、耳が痛くなるほどの静寂が取り戻される。
「……これで終わる。これで、あなた様に………」
闇の主の昏い呟きは、誰の耳にも届かないまま、哀しい嗤いへと転ずる。
漆黒の空間に、その声は、ただ木霊するだけだった。
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