7月の出来事

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   次の日―――  夏凛の家は朝から慌しく引越しの作業をしている。    僕はそれを手伝う事もせず、ただ自分の部屋の窓から見下ろしていた。    額に浮き出た汗を拭う夏凛を見下ろして、どこか感傷に浸っている自分がいた。    もう、夏凛の顔はしばらく見られないのか、と思うと心苦しくもあったが、しかし、僕たちは約束した。    必ず再会しよう、と。  お互い好きでい続ける、と。    だから僕は、見送りもせず、その作業を見守っていた。  これ以上何かを話してしまうと、余計に離れるのが嫌になってしまうから。    ふと。  顔を上げた夏凛と目が合った。    僕は驚いて固まってしまったが、夏凛は唇に人差し指を当てながら何か喋った。    部屋の中にいた僕にその言葉は聞こえなかったが……いや、実際には何も言っていなかったかも知れないが、その唇はこう言っている様に見えた。   『やくそくだよ?』    ……それはお互い様だろう?      僕は何も言わずに微笑み返し、車に乗り込む夏凛を部屋から見送る。      徐々に遠ざかっていく車を見ながら、僕は既に夏凛と再会できる日を夢見ていた。
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