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「まあな……と言っても父さんに聞いた話だけどな」
「それにしても……7年半かぁ……」
遠いね、と哀しそうな目で夏凛は呟いた。
あの頃の僕は、ただひたすらに幼かった。
中学3年生に上がり立てで、何の知識も無い子供が、上っ面だけ知っている言葉を並べて七夕伝説を汚しているだけだ。
幼馴染である夏凛の気持ちも考えずに、頭でっかちな知識を披露しているだけだった。
そんな夢のない僕の言葉を、否定もせず、言い返しもせず、夏凛は聞いていた。
聞いて、その言葉の意味を考えるように僕から視線をそらして空を映した。
その時―――
僕は空を見上げる夏凛の横顔を見て、少し心が痛んだ。
その時は何故胸が痛くなったのか解らなかったけれど……。
それが。
僕の覚えている夏凛との七夕の記憶だ。
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