7月の出来事

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   夏凛の転校の知らせを聞いてすっかり放心してしまっていた僕は、気が付くとあの丘に来ていた。    街を一望できる―――七夕の日に夏凛と一緒に来た丘に、僕は一人で地べたに座って赤く染まる街を見下ろしていた。  今まで一緒に居た幼馴染が転校する。  もちろん、それは今生の別れではないにせよ、子供である僕にはそれに等しいものがあった。  ましてやアメリカだ。  そんな所、想像も出来ない。  だから。  僕は夏凛とは二度と会えないのだと思い―――そして。  一縷の涙を頬に伝わせた。   「あ、春吉ちゃん見つけた!」  突然後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。  僕は体を跳ねさせると急いで腕で涙の跡を拭った。  声の主は……振り向かなくてもわかる。 「やっぱりここにいたんだね」    僕は……何も答えない。 「春吉ちゃん、教室だとずっと下向いてたけど……大丈夫? お腹痛いの?」  ……的外れすぎる。  夏凛は本当にわかっていないでそう言っているのだろうか。    いや、違う。  俺をからかっているだけだ。
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