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夏凛の転校の知らせを聞いてすっかり放心してしまっていた僕は、気が付くとあの丘に来ていた。
街を一望できる―――七夕の日に夏凛と一緒に来た丘に、僕は一人で地べたに座って赤く染まる街を見下ろしていた。
今まで一緒に居た幼馴染が転校する。
もちろん、それは今生の別れではないにせよ、子供である僕にはそれに等しいものがあった。
ましてやアメリカだ。
そんな所、想像も出来ない。
だから。
僕は夏凛とは二度と会えないのだと思い―――そして。
一縷の涙を頬に伝わせた。
「あ、春吉ちゃん見つけた!」
突然後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。
僕は体を跳ねさせると急いで腕で涙の跡を拭った。
声の主は……振り向かなくてもわかる。
「やっぱりここにいたんだね」
僕は……何も答えない。
「春吉ちゃん、教室だとずっと下向いてたけど……大丈夫? お腹痛いの?」
……的外れすぎる。
夏凛は本当にわかっていないでそう言っているのだろうか。
いや、違う。
俺をからかっているだけだ。
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