6人が本棚に入れています
本棚に追加
「転校……なんで言ってくれなかったんだ?」
僕は夏凛の問いに答えるでもなく、自分の言葉を口にした。
「せめて僕にだけは教えてくれても良かったじゃんか。なんで教えてくれなかったんだよ」
ふてくされた声で言っている僕の後姿は夏凛にはどういう風に映っているのだろう。
きっと、利己的で理不尽な物言いに軽蔑されてしまうかも知れない。
しかし。
夏凛の言葉は違った。
「先に言ったら……春吉ちゃんは驚かなかった?」
「……少なくとも、今日驚く事は無かった」
「もし、先に春吉ちゃんに言ってても、春吉ちゃんはいつも通り私と接してくれた?」
「…………」
夏凛の問いに、僕は答えられなかった。
普段通りに……知らないふりをして接する自信は、無かった。
僕が返答しない意味を夏凛は察して、「ね?」と呟いた。
「だから私は言いたくなかったんだ。いつかは言わなきゃいけないとは思ってたけどさ……その所為で春吉ちゃんとギクシャクしちゃうのは嫌だったから」
最初のコメントを投稿しよう!