6人が本棚に入れています
本棚に追加
何の会話も無い僕たち。
普段ならば何も気にせずに他愛の無い話をしているにも関わらず、しかしこんな時に限って何を話していいのかわからずに、僕は口をつぐんでしまっていた。
「ねえ」
僕の沈黙に耐えかねたのか、口火を切ったのは夏凛だった。
「春吉ちゃんって……キ、キス……したことある?」
「えっ……?」
キスってあれだよな?!
漫画とかで恋人同士がやってる……。
「い、いや、ないけど……」
「じゃあ、ちょっとしてみない? 2人の約束の証に」
「え……え?」
「……嫌?」
夏凛が哀しそうな顔をしながら僕を顔を覗き込む。
嫌では、ない。
「ぼ……僕でいいの? その、は、初めてじゃないの?」
「春吉ちゃんがいいの。初めても何も春吉ちゃん以外の人とキスする気なんてないもん」
その言葉は嬉しい。
けれど。
ここでキスなんてしてしまったら余計に離れるのが辛くなってしまう気がする……。
しかし、そんな僕に構う事無く、夏凛は目を瞑った。
僕は固唾を飲み込んだ。
ここまでされた以上、しかし僕も男だ。
乾いた唇を軽く噛んで湿らせると、夏凛の両肩を掴む。
そして、ゆっくりと彼女に顔を近づけていった。
最初のコメントを投稿しよう!