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「家までまだあるけどええん?」
「今日は少し歩くよ」
「そうか・・・今日仕事?」
「いいや、今日は休み。明日からまた3連勤だけどな」
「頑張るね~・・・俺みたいにやめたらええのに」
「俺は裕と違って金ないんだから、HAVE TOなんだよ」
「なんで英語なん?」
「そこ突っ込むのかよ」
有希が笑った時、風で短い茶色の髪が揺れる。
「・・・・」
「?なんだよ?」
「いや・・気をつけて帰りいや」
「ああ、裕もな。事故んなよ?」
「阿呆」
そういって勢い良くエンジンをかける。
有希はいつもとは遠回りの道を選んで帰った。
仕事がない日は空気が痛くない。
頭痛もなけりゃ、吐き気も、目眩すらおこらない。
(・・・本当単純な体してる。)
今日は1限終わりだし、本当にいい日だ。
気持ちが明るい日と暗い日では見える景色がウソのように異なる。
空の青さ、風が頬を撫でる感覚でさえ心地よく感じる。
見えないものが、ウソのように見えてくるのだ。
しばらく歩いていると、寂れた公園に少年が座っていた。
有希は少年から視線を外すとゆっくりと瞳を閉じる。
冷や汗がこめかみから流れ出した。
「・・・・・・・」
有希は視界を元に戻すと、目をこすって再び少年のいるブランコに視線を戻す。
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