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裕が有希を一瞥すると、彼女は面白そうに口角をつり上げる。
「なんだ?俺がそんなに男前か?」
有希の言葉にちょっとばかり怒りを覚え反対を向く。
「んなに見てないやろ。悪かったな、男前やなくて」
「そこまで言ってねーだろーが。ガキかお前は。・・心配しなくてもテメーは十分かっこいいよ」
横目に入る親友の黒髪を見る。
眼鏡越しからでもわかる整った顔立ち。
裕は気づいていないだろうが、俺と並ぶと彼は一層輝く。
女が彼に向ける熱い視線が私は嫌でたまらなかった。
初恋は実らないとはよく言ったもんだ。
初めて彼とであったのは高校2年の時。
ママの苦しい顔がこれ以上見たくなくてキャバクラでバイトを始めた。
私は客の前で愛想何て持ち合わせなかった。
苦しい仕事でどうして笑顔になれるだろうか。
ドレスはいつも黒を着用した。
バイトを始めて半年が経った頃、いきなり私は売れ始めた。
おそらく物珍しいキャバ嬢として、ネットで話題になったと言ったところか。
ママは決まって遅かったから、言い訳なんていくらでも通用した。
朝狩りが多くなった頃・・裕と出会った。
彼は一つ上の階の人気ホストだった。
これは運命的に、と言った方がいいのかもしれない。
私は地下一階階段から、そして彼は2回の階段から一階に向かう時にはちあったのだ。
裕の一言は爆笑もの。「魔女?」目をこすりながら私を見つめる彼は大層馬鹿面に写っていたに違いない。
その朝私は久しぶりに笑った。
夜の仕事をする奴は決まって闇が大きいというが、私と裕は重症だった。
たまに会うと体を重ね、互いの憂さを晴らした。
そんな仲をやめたのは、お互いに大学を目指すと決めたとき。
世間の目が嫌で、馬鹿にされる要素をつぶしたかったのもあっただろう。
お互い売れっ子だった事もあり、学費に関しては問題なかった。
ホステスの一室を借りて、寝る間も惜しみ勉強した。
そうして私たちは学力というブランドを手に入れた。
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