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しかし、大学に入学したのは正解だったのだろうか・・
今はそう考えてしまう。
学力を手にした私たちに待っていたのは、汚れた過去を持つ自分自身というコンプレックス。
裕は眼鏡で顔を隠し、私はウィッグで女を封じた。
有希は目頭を押さえながら上を向く。
「・・・・・なあ・・・裕」
「ん?」
「お前・・・・神て信じるか?・・世界中の誰からも尊敬されて、ただ一人俺らの上に立つ存在」
「・・・1限の宗教の授業の前に言うセリフ?」
「いいから、信じるか?」
裕は少し下を向く。
有希もつられて目を細めた。
ー神は嫌いだ。
名前だけの存在。
誰でも平等に助けてもらえないそのもどかしさと苛立ち。
平等でない幸せと不幸。ー
誰のせいでもないと理解はしても、負の感情が自分を支配する事は止める事が出来ない。
すると、ぽつりと裕が呟いた。
「俺は信じる」
裕の声に自分の視界が開けた。
「頼るものがなけりゃ、俺は立っていけん」
裕の表情は明るいものとは言えなかったが、有希にはとても眩しく見えた。
「ひゅーかっこいー」
「ちゃかすな馬鹿」
「ん~・・・でもさじゃあ可哀想だな」
「?」
「神様って」
有希の言葉と同時に窓越しの隣の木から鳥が羽ばたいた。
「・・・・なんか今のバック、格好よくね?」
「阿呆」
1限の鐘が響いた。
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