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「何だよ」 目を見開いて胸を押さえる彼女の様子に、平野正嗣はその精悍な容貌ににっと笑みを浮かべ、 「お前、さては仕事以外の事考えてたろ?」 「……違いますー。集中してたんですよ」 事実なだけに、内心穏やかではなかった。 「で、何ですか?正嗣さん」 「ああ、ちょっと教えて欲しいんだけど」 188センチの長身を屈めて書類を示す正嗣に身を寄せ、話を聞く。 「正嗣さん」「真琴」と名前で呼び合うこの二人は、兄妹のように仲が良かった。 年齢は正嗣が三つ上だが、実務では真琴が二年先輩だ。 「あー、成程」 正嗣は納得の表情で頷き、 「流石、真琴。余裕だな」 「任せてください」 真琴はにっこりと微笑んで、
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