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170キロ超の車体が、ぐらりと反対側へ傾く。 「うわっ」 「行くぞ、杉」 焦る正嗣の様子にほくそ笑む隼人が、紘平の手を握って駆け出した。 「近くでタクシー捕まえて帰ろう」 「隼人!!てめぇ、殺すぞ!!」 何とか愛車と地面との接触を避けた正嗣が怒鳴った。 「夜間は、お静かにー」 唇に人差し指を当てながら、笑顔の隼人が、紘平にしか聞こえないような小声で言った。 「……意外と、楽しい関係かもな」 「……!」 「帰ったら、早速お前の奪い合いだ。覚悟しろよな」 その言葉が嬉しくて恥ずかしい紘平は、無言で微笑む。 二人は、一緒に走った。 左手には正嗣のヘルメット、そして痛いくらい強く握り合った手から伝わる、隼人のぬくもり。 僕のエゴで中途半端な関係になってしまった。 二人には悪いけど、どうかその心地よさに甘えさせて。 そう思いながら、紘平は瞳を微かに潤ませていた――。    ◆「Love or Lust」 完◆
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