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真琴は店の時計に目を遣って、再び自分の味噌ラーメンに視線を戻した。
何気なくここにいるが、男性と二人きりで食事に来たのは初めてのこと。
相手が正嗣とはいえ、何となく胸の奥がきゅうと苦しくなる。
――やだ、正嗣兄さんだよ。
何で意識しちゃうかな。
気恥ずかしさからか、つい、口が動いていた。
「実は私、男の人と二人きりで――」
真琴はそれから先の言葉をなくした。
彼女を絶句させたのは、ビールジョッキを傾ける正嗣の姿。
「あんた、いつの間にそんなもん」
喉を鳴らしながら一気に中ジョッキのビール半分を飲んだ正嗣は、幸せそうに目を細め、息をついた。
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