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「給料出てたら、近場の『松代』でもよかったけどなあ」
忙しなく注文が飛び交うラーメン屋のカウンター席で、炒飯を口に運びながら、正嗣が残念そうに言った。真琴はスープで餃子を流し込むと、
「じゃあ、給料日後に是非『松代』で」
その言葉に正嗣は目を剥く。
「マジかよ」
「私、向こうの串焼き盛り合わせを誰にも遠慮しないでがっつり食べたいんです」
「じゃあ、割り勘にしようぜ」
ため息混じりの、弱々しい声。
「……お前の肉食ぶり、俺はよく知ってるからな」
「バレてましたか」
小柄なくせに肉1キログラムは余裕で食すると語り継がれる真琴の肉食ぶりは、小さい事は気にしない主義の正嗣さえ、全額奢るのは危険と判断せざるを得なかったのだ。
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